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| 2.2005年4月20日 シャントを作る | ||||||||||||
入院したのが10月9日、それ以来、首のカテーテルから透析していたが、様々な検査の後、いよいよシャント(透析をするための十分な血流量を確保するために、本来、途中でつながっていない皮下の浅い部分の手首の動脈と静脈をつなぎ合わせる手術を行い、静脈に動脈血が流れるようにしたもの)の手術をすることになった。 シャ ントは利き腕ではない左手首に作る。そのため、入院してから、左手は保護されていた。左手で血圧を測ったこともなったし、注射をしたこともなかった。手術着に着替え、広い手術室に入り、体が辛うじて乗るくらいの狭い手術台に乗せられた。初めての経験であった。暖かい部屋ではなく、寒寒しい感じの部屋だった。 どんな風に手術しているのか、幕に遮られて見えないが、部分麻酔だから、様々な物音や話し声が聞こえてくる。長い沈黙が続くと不安になり、笑い声がすると、途端に安心する。 手術は、1時間ほどで終わった。車椅子で部屋に戻されたが、本当はそんな必要はなかった。しっかり歩くことができたからである。 手術したシャントを保護するために、段ボールで作った中空の三角柱が渡された。その中に腕を入れて寝るのである。 2晩くらい使えばよいらしいが、「シャントは命と同じくらい大切なもの」と言われては、神経質にならざるを得ない。 看護士から「もういいでしょう。」と言われても、ひょっとして、眠っている間に何が起こるか分からないと思うと中々、この三角柱が離せない。 半分、起きているような状態で,ひたすら痛みに耐え、三角柱に腕を入れ続けた。箱に腕を入れて眠るのは想像以上に大変である。腕が痛いだけでなく、体全体がおかしくなってしまった。 -------------------------------------------------- シャントは手術後、『成長』し、1週間もすると、血液透析が可能になるという。 僕の場合は、通常は1週間ほどしか使わない首のカテーテルを2週間以上使ったためか、傷口は赤く腫れ、病原菌が入ったとかで疼痛が激しく、寝起きするのにも痛んだ。 やむなく、シャントの発達を待たずにカテーテルを抜き取り、抗生剤を打ちながら、直接、腕の動脈を使って透析をすることになった。 プスリと太い針が突き刺さり、僕は今更ながら医師の手際のよさに感心せざるを得なかった。カテーテルを使う場合はダイアライザーとカテーテルを結ぶだけでよいが、カテーテルがなくなると、血管に相当太い針を刺さなければならなくなる。 『チクンしますよ。』という声と共 に注射されるのだが、可愛らしい言葉の響きとは裏腹に実に痛いが、『チクン』してもらわないことには始まらないのである。「生きているから痛いんだよ。生きている 証拠だ位に思って、喜ばなくてはね。」そんなふうに言う患者もいるが、確かにそう かも知れない。 ようやく、シャントが成長して血液透析がシャントを使ってできるようになってからも、すべてが順調と言うわけではなかった。カテーテルの時もそうだったけれど、血管の状態は悪くはなさそうなのに、何故だか分からないが、脱血が十分に確保できないのである。 血量が十分でないと、透析の能率が悪くなるのは言うまでも無いが、最悪の場合は血液透析ができなくなってしまう。そういう状態になると、看護士が、注射の針先を回してみたり、深浅、動かしてみたりする。 血管には痛覚がないというこ とだから、大した痛みがあるわけではないが、そんな様子を凝視せざるをえない心理負担は大変なもので、ちょいとした拷問を受けているような気分になる。どうしてもうまくいかないと、まったく別の場所に新たに針を刺さなければならないこともあった。 -------------------------------------------------- そんなわけだから、透析中は、自然、腕を可能な限り動かさないような習慣が出来上がった。ダイアライザーに結び付けられると、殆ど身動きもしないで、3時間以上寝ているのである。 その効果は覿面で、左肩は脱臼したように痛み、左手の肘が妙に痛いなと思っていると水が溜まってしまっていた。(こんなことは決して珍しいことではない という。にもかかわらず、医師にはその原因が分からない。 整形にかかっても、湿布 薬を与える位で何のアドバイスもしてくれない。肘の下にタオルか何かお置き、肘がベッドに触れる角度を適当に変えてやればよいのだが、そんなことすら分からないのである。) 左手首を耳に近づけると『シューシュー』という爬虫類のような嫌らしい生き物の呼吸音のような音がする。シャントを血液が流れる音である。実に不快な音であり、その音を聞くと自分が健康を失ってしまったのだなということを受け入れざるをえないような気になる。 実際、長年,血液透析を受け続けた人の左手を見ると慄然とせざるを得ない。木の根が腕に根を下ろしたといえば聞こえがよいが、黒く盛り上がった不気味な姿を見ると、まさに『マムシ』が手に取り付いているとしか思われない。 「木を切ったりすると、時には枝がささることもある。そうなると、座頭一じゃないけど、文字通り、血がほとばしり出るからね。 だから、完全に腕を防護しなければ、庭掃除だって出来やしないんだよ。」シャントは常に保護しなければならない。透析を受けるたびに、確認される。 腕時計はできないし、重いものを持ったり力作業することも禁止である。発育には、個人差があって、数年間使用しても、ほとんど目立たない患者もいるが、僕の場合は、比較的、発育がよいようだ。 写真は、10年ほど使い込んだシャントがある腕の写真、血管は、変色していないが、大きく盛り上がっているのが分かる。 ちなみに、もう一枚は血液透析を始めてから3箇月ほど経過した僕の腕の写真。大分発達し始めている。 ![]() |
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