すっかりちょんまげが僕のトレードマークとして定着しているが、このちょんまげも時には決まった理髪店で手入れをしてもらっている。
そこで、どうせ行くなら地域活性化の一助にと初めて近所の理髪店に行ってみた。
店は地下一階にある。階段を降りて行くと入口前には大きな段ボールの山。それを見て一瞬戸惑いはあったものの思い切って店内に足を入れた。
すると6台のシートの片側半分にも段ボールは乗っている。
そんな光景を見て少し躊躇していると、店の奥からやや足を引きずり気味のご主人が出てきた。思わず僕は「やっていますか?」と聞いてしまった。
店主に促され奥の椅子に座ってはみたが、それでも店から出ようかどうか迷っていた。
しかし、鋏は既に動きだしていた。手にも梗塞の後遺症があるようだ。
しかし、こうなりゃ、もう「まな板の鯉」と覚悟を決めた。
そして間もなくのこと「痛ッ」、髪の毛が引っ張られる。それも頻繁にである。“えらいとこに入ってしまったわい”と思いながらも、「景気はどうですか?」と形ばかりの話題を持ちかけた。
それからだ。ろれつの回らない店主が話し出した。
40数年間営業してきたが、5年程前に脳梗塞を患い、それからは年々客が減り、いまでは一日に1人か2人の客しかこないという。
最盛期は東京オリンピックの年で従業員も数名ほどいたそうだ。
そんな、世間話の合間にタオルを渡された。
顔をふけという意味らしい。“アレッ、本当は拭いてくれるんじゃないの?”と思いつつ、自分で拭いて返した。
すると、店主は5メートル先にある洗濯機に見事投げ入れたのである。
前掛けも同様にして投げる。
ときどき毛を引っ張れながらも、そのコントロールのよさに感心して見ていた。
なまじ思いついたような地域活性化支援、世間はそんなに甘くはない。
|